クルマのデータはどこへ行く?21台の通信調査が示したプライバシーの盲点
クルマの位置をアプリで確かめ、離れた場所からドアを施錠する。便利な機能を使うとき、車両とスマートフォンの裏側では、どこにデータが送られているのだろうか。米ノースイースタン大学などの研究チームが、コネクテッドカー21台と連携アプリ30種の通信を調べた研究を公開した。
調査で見えたのは、クルマのデータを考える際に「車両本体だけを見ればよい」とは言えない現実だ。米Hacker Newsでも議論が広がったこの研究は、日本の利用者にも、便利さとデータの扱いを一緒に確かめる視点を与える。
21台のうち19台が第三者のドメインへ通信
研究チームはConsumer Reportsの車両を使い、2024年10月から2025年8月にかけて米国市場の21台を調査した。車両を専用のWi-Fiアクセスポイントにつなぎ、停止中や走行中の通信先を記録した。その結果、21台中19台がWi-Fi経由で少なくとも一つの第三者ドメインに接続した。通信先には広告・追跡サービスとして知られるドメインも含まれた。
ここは慎重に読む必要がある。車両のWi-Fi通信は暗号化されており、研究者がこの方法で確認できたのは主に接続先だ。第三者への接続があったことだけで、特定の個人情報が車両から送られたと断定はできない。 また、車載通信には携帯回線もあるため、今回の観測は車両の全通信を網羅したものではない。
連携アプリでは識別情報の送信も確認
研究チームは車両と組み合わせた30種のiPhoneアプリも調べた。こちらは通信内容を解析し、7種のアプリから広告・追跡に関わる第三者へ、車台番号(VIN)、メールアドレス、電話番号、精密な位置情報などの機微な識別情報が送られる事例を確認した。5種ではVINと別の個人情報が組み合わされていた。
車両の状態確認、充電場所の検索、遠隔操作など、アプリが増やす利便性は大きい。一方で研究によれば、連携アプリを加えると、広告・追跡関連の事業者への接点は平均でおよそ倍になった。プライバシーを考える単位は、車内の設定画面だけでなく、スマートフォン側の権限やアカウントにも広がる。
日本のドライバーが見るべきところ
調査対象にはトヨタ、レクサス、ホンダ、日産、スバルの車両も入っている。ただし、対象は米国市場の特定モデルと調査時点のアプリだ。日本仕様の同じブランドの車両でも同じ通信が起きる、と読み替えることはできない。 研究チームも、標本外の車種や米国外へ結果を一般化できるとはしていない。
それでも、購入・利用時の問いは具体的になる。連携機能を有効にするとどの情報が必要になるか。位置情報や追跡に関するアプリの権限は何か。機能ごとに共有を止められるか。販売店やメーカーのプライバシー説明を、便利な機能の一覧と同じくらい確かめたい。
研究では、指摘を受けたホンダが、追跡関連の第三者へ精密な位置情報を送らないよう収集方法を改善した事例も紹介されている。測定と開示が変化につながりうる一方、利用者が細かく選べる仕組みはまだ十分ではない。これからのクルマの品質には、走行性能やアプリの使いやすさに加え、データの行き先を説明し、制御できることも含まれていくだろう。
出典:研究チームの概要と調査方法、論文情報(IMC 2026)。海外コミュニティでの反応はHacker Newsを参照。内容は2026年10月3日時点の公開情報に基づく。