基地局がAIを動かす。ソフトバンクとNokiaの「AI-RAN」国内実証へ

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基地局がAIを動かす。ソフトバンクとNokiaの「AI-RAN」国内実証へ

基地局は、電波を届けるだけの設備ではなくなるのか。ソフトバンクとNokiaが、国内の商用ネットワークで「AI-RAN」を試すと発表した。通信のための計算資源とAIの処理を同じ基盤で動かす構想が、実際の通信量を扱う環境へ近づいている。

両社は2027年、ソフトバンクの商用ネットワーク環境でフィールドトライアルを行う予定だ。ソフトバンクの「AITRAS」上でNokiaの無線アクセスネットワーク(RAN)ソフトウェア「anyRAN」を動かし、通信品質と安定性を保ちながら、AI処理と無線処理を協調して管理できるかを確かめる。今回発表されたのは実施への合意であり、国内での試験結果や商用サービスの開始ではない。

なぜ「基地局でAI」なのか

現在の基地局は、スマートフォンなどと通信網をつなぐ役割を担う。AI-RANでは、その近くにある計算資源を通信の最適化に使い、条件が合えば別のAI処理にも使う。遠方のデータセンターだけに頼らず、現場に近い場所で判断する「エッジAI」の土台にする考え方だ。

利点は二つある。まず、電波の状態に応じた処理を高度化し、既存の周波数をより有効に使える可能性がある。次に、ロボットや映像分析のように応答時間が重要な用途で、データを遠くまで往復させずに処理できる可能性がある。ただし、基地局には通信を途切れさせないという最優先の仕事がある。AIの負荷が増えても品質を守れるかが、今回の試験の核心になる。

海外の実証と、日本でこれから測ること

Nokiaは10月21日の発表で、フィンランドのElisaが5Gネットワーク上の同じAI-RAN基盤で音声、モバイルデータ、映像分析を同時に動かしたと説明した。ドイツテレコムとのAIによる無線処理の初期実験では、上り通信速度に通常10〜15%の改善が見られたという。ただし、後者は実験室での測定値で、広い商用網で同じ改善が得られると示したものではない。

日本の試験で注目したいのは、通信トラフィックが変動する中での品質、AIと無線処理の資源配分、電力消費、そして障害時の運用だ。Nokiaはネットワーク運用を支援するAIエージェントの構想も発表したが、それも監督の仕組みを含む開発段階にある。基地局が「考える」インフラになるなら、処理能力だけでなく、誰が動作を監視し、どこで止められるかが重要になる。

AI-RANは6Gを待つだけの話ではない。既存の5G設備をどう進化させるかという、いまの投資判断にも関わる。日本での2027年の試験は、この構想を宣伝文句から運用可能なインフラへ近づけられるかを見極める機会になる。


出典:ソフトバンクの発表(2026年10月20日)、Nokiaの発表(2026年10月21日)。数値や計画は各社公表に基づく。